イースター・メッセージー
明治の文豪に夏目漱石という人がいましたね。「吾輩は猫である」とか「坊ちゃん」とか、あなたも中学生のころ貪るように読まれたのではないでしょうか。多くの愛読者をもつ漱石ですが、彼は48歳の時、大きな悲しみを経験します。それは最愛の娘、ひな子を病で失うという経験です。日記の中で漱石はこう書いています。
「昨日は葬式 今日は骨上げ。明後日は納骨…多忙である。
しかし全ての努力をした後で考えると 全ての努力が無益である
死を生に変化させる努力でなければ全てが無益である
こんな遺恨なことはない」
親より先に我が子を失う悲しみが読者にも切々と伝わってきます。と同時に、生と死に対する鋭い洞察の言葉が共感を与えます。
「しかし全ての努力をした後で考えると 全ての努力が無益である
死を生に変化させる努力でなければ全てが無益である」
これはまさにすべての人間の心からの叫びにも似た思いではないかと思うのです。人の一生には華やかな時もあるでしょう。嬉しい時もあるでしょう。でも悲しみや辛い時もあります。そして最後は全てを奪う死という時が誰にでも待ち受けているのです。そしてその死は時に残酷です。そんな死に直面して、死を生に変化させる努力でなければ全てが虚しい、と漱石ならずとも嘆く方も多いのではないかと思います。
しかしここに素晴らしい逆転があるのです。歴史の中で「死を生に変化させた」イエス・キリストという存在です。約二千年前、キリストはエルサレムのゴルゴタの丘で人類を救うために十字架にかかられ死をもって救いの道を開かれたその三日後、死を蹴破って甦られたのです。不安におののく弟子たちに復活の体を何度となく示しその事実を証明されました。恐れと不安にあった弟子たちの中に深い確信と希望が生まれていきました。キリストの復活は殉教をも辞さず、命を掛けて伝道に駆り立てたのです。正に「死を生に変化させる」キリストの命です。
イースターは正に死の不安と絶望を打ち破る出来事なのです。
このキリストの復活をお知りになり希望を抱からますように
キリストの言葉「わたしは甦りです。いのちです。わたしを信じる者は死んでも生きるのです」(ヨハネ11章25節)
牧師 中 西 正 夫